公開日 2022.12.12
国頭村有償ボランティア「〇和会」(れいわかい)の活動風景
国頭村には、村内に在住する一人暮らしの高齢者を対象に、家の修繕や片づけ、草刈りや電球交換などを行う有償ボランティア団体「〇和会」(れいわかい)があります。
「〇和会」は、令和3年6月に11人のメンバーで設立され、取材時現在(令和4年10月)までに8回の活動を行ってきました。今回、会が設立された経緯やどのような活動を行っているのか、「〇和会」の代表者である金城定淳会長と、国頭村生活支援コーディネーター(SC)のお2人に取材してきました。
「〇和会」・金城定淳(きんじょうていじゅん)会長
■ 有償ボランティア団体「〇和会」を立ち上げた経緯を教えてください。
【金城会長】 もともと村内の”安田くいなふれあい公園”や”くにがみ鏡地パークゴルフ場”で活動するパークゴルフ仲間で、お互いの家の草刈りをしたり、仲間の家の敷地内に小屋を作って皆で集まっていました。2-3年前から飲み会の席でメンバーから「地域にはもっと困っている人がいるかもしれない。地域貢献活動をやってみたい」という声が上がっていました。そこで、令和3年5月に生活支援コーディネーターの山田さんに相談したことがきっかけで、その1か月後に「〇和会」を立ち上げました。「れいわ会」と名付けたのは、令和に立ち上げたからで、記号の「〇」と「和」で末広がりの会にしたいという願いを込めています。
現在10人(男8人、女2人、年齢65歳~79歳)で活動していますが、メンバーは元電気工や消防署員、サラリーマン、農家、バスガイドなど様々です。今まで地域貢献したいという漠然とした思いを持っていましたが、山田さん(生活支援コーディネーター)に相談したことで、「どんな方を対象に、どんな活動をしたら良いか」が具体的になり、有償ボランティアという方法を提案していただき、助かりました。
国頭村生活支援コーディネーターの山田梨枝子(やまだりえこ)さん、知花麻美(ちばなあさみ)さん
■ 「〇和会」立ち上げに、生活支援コーディネーターや関係者がどのような助言やサポートを行ったのですか。
【SC山田さん】 まず、金城会長から地域貢献活動をしたいとの思いや実際に何ができるか?ということを具体的に伺いました。ボランティアの継続性や安全性を考慮し、国頭村社会福祉協議会に相談して「有償ボランティア」ができる体制を作ってもらいました。これまで村社協にはボランティアが個人で登録する仕組みがあったのですが、今回、団体でも登録できる仕組みに「国頭村社会福祉協議会ボランティア登録要領」を変更していただき、「〇和会」が第1号の登録団体になりました。
国頭村社会福祉協議会の有償ボランティアは、赤い羽根共同募金配当金を原資にして、①社協から活動したボランティアに実費相当分の費用弁償を行う(1人1時間500円)。②活動に伴う燃料費や消耗品費等の必要経費は、利用者からボランティアに直接支払われる、という形をとっています。
また、ボランティア活動中のケガや損害賠償を補償するために、登録者は年350円の保険に加入することになっています。
【SC山田さん】 「〇和会」を依頼したい住民は社協に依頼申込みをすることになっていますが、各字の区長さんや民生・児童委員から地域包括支援センターや私(SC)に相談が寄せられることが多く、ご本人と社協に相談してから、金城会長にボランティア依頼をしています。その後、現場主任で元電気工の山城和夫さんと私が現場に伺い、活動に必要な人数や時間の見積もり、今後のスケジュールを調整します。
■ これまでの活動について
【金城会長】 これまで、【雨漏り対策、漏電対策、クーラーの取り外し、コンセント交換、電球交換、腰痛のためのベッド作成】など家屋の修繕や庭の草刈り、木の伐採、不要な家具の処分などの活動をしました。
活動時間は、昼の1時から4時までの2‐3時間と決めました。国頭村のごみ処理施設が4時に閉まるため、それまでに作業を終わらせる必要があるからです。活動を始めた当初に比べて、段々と短時間で作業を終了できるようになってきました。先ず、ミーティングを行い、段取りと役割分担をしてから作業を開始することにしたり、粗大ごみの出し方なども工夫するようになりました。毎回、作業終了後に反省会をし、気づいたことや改善点をお互いに話し合っています。
【SC知花さん】 ある利用者は「室内がきれいになり生活意欲に変化が出てきた。自分でコーヒーを沸かして朝食を楽しむようになった」と表情も明るくなってきています。また、他の利用者は「室内の道具や屋外の片づけで気持ちよく旧盆を迎えることができる」と喜んでいました。金城会長はじめメンバーの皆さんが個人情報の管理にも気をつけていらっしゃるので、安心して活動を依頼することができます。
活動前のミーティングで各自の役割分担を決めます
本格的な草刈り作業
草刈り作業後、玄関先がきれいになりました
家具をその場で解体し、軽トラックへ積み、ごみ処理施設へ搬送します
作業終了後は皆さん楽しみの懇親会
■ 最後に、今後の展望についてお聞かせください。
【金城会長】 作業には、必ずご本人の親族や自治会長もしくは民生・児童委員に同席してもらっています。今後も私たちの活動がきっかけとなり、孤立しがちな高齢者を再び地域につなぐことで継続的な支援につながってほしいと思っています。
また、作業終了後の「19番ホール」(懇親会)を毎回楽しみにしています。仲間と一緒に集える場所を大切にし、パークゴルフやボランティア活動を楽しみながら継続していきたいと思います。次はバスを貸し切って沖縄本島南部の旅行を企画しています。人生をどう楽しむか、それが私たちの大きな目的です。仲間と一緒に活動できること、地域貢献できること、そして終わった後の充実感がボランティア継続の秘訣だと考えています。
《取材感想》
住民自身が主体的に始めた有償ボランティアを取材させていただきました。パークゴルフで集まった仲間が「地域にはもっと困っている人がいるかもしれない。地域貢献活動をやってみたい」という思いを持ち、それが実際にボランティア団体として活動していくようになった経緯は、多くの市町村の参考になると思います。
「自分たちの活動がきっかけとなり、孤立しがちな高齢者が再び地域につながってほしい」、「仲間と一緒に活動できること、地域貢献できること、そして終わった後の充実感がボランティア継続の秘訣」など、示唆に富んだことばをたくさん聞かせてもらいました。
金城会長はじめ国頭村「〇和会」の皆さま、生活支援コーディネーターの山田さん、知花さん、ありがとうございました。
(広域連合・渡慶次)