公開日 2023.02.08
玻名城の健康体操サークル
八重瀬町は34の行政区があり、現在13の自主体操サークルが活動しています。今回は、玻名城(はなしろ)公民館で活動している健康体操サークルを取材しました。
■ 玻名城健康体操サークルの活動
玻名城健康体操サークルは、毎週木曜の午前10時~11時40分頃まで玻名城公民館で活動しています。平成30年11月に活動を始めて5年目になります。(令和5年1月現在)
メンバーは22名で、取材に伺った日は63歳~88歳までの19名(男性3名、女性16名)の方が参加していました。ほとんどの参加者はご自分で歩いて公民館までやってきますが、一人で来れない方はリーダーさんが車で送迎されるそうです。
◇午前9時頃に、リーダーさんが公民館を開けて椅子やDVD等の準備をします。
◇会場に到着した方は、体温・血圧をチェックし、参加名簿に記録します。
◇午前10時になると、DVDを観ながら体操をスタートします。1枚のDVDに2種類の体操が録画されているので、連続して行います。
◇午前11時40分頃に全プログラム終了、片付けは参加者全員で行います。
①八重瀬町オリジナル「やえせカジマヤー体操」(DVD23分)
椅子に座った状態でのストレッチから始まり、座位・立位での筋力強化を行います。重りは「いきいき百歳体操」で使っているものと同じで、個人の筋力に合わせて200g~1.2kgまで負荷を調整できます。八重瀬町役場で購入し、各サークルに貸出しています。
「やえせカジマヤー体操」のDVD
スクワット(舞台上にDVDモニター)
重錘ベルトを使った下肢外転運動
②「いきいき百歳体操・徳島版(認知機能改善編)」(DVD22分)
全編椅子座位で、例えば「足踏みをしながら、両手をグーパーする」、「膝の曲げ伸ばしをしながら、両手を上げる」など手足を別々に動かす組合せを行います。複数の課題を同時に行う「マルチタスク」と言われる活動で、認知機能の改善に効果が期待できます。
短い休憩の後、「スクエアステップ エクササイズ」を4グループに分かれて行います。
③「スクエアステップ エクササイズ」(40-50分)
「スクエアステップ エクササイズ」は転倒予防と認知症予防に効果が期待でき、住民だけでも実施できる効果的なプログラムです。八重瀬町では県外から指導者を招き、住民を対象とした「スクエアステップ リーダー養成講座」や「フォローアップ研修」も行っています。
スクエアステップ エクササイズ
玻名城健康体操サークルでは、サークルに参加して間もない人向けやゆっくりしたスピードで進めるグループも作り、どなたでも楽しめるように工夫しています。かなり長い時間でしたが、皆さん休憩なしで熱中して楽しんでいました。
リーダーが見本のステップを行い、参加者は同じステップを踏んでいくのですが、徐々に複雑なステップに段階を上げるにつれて、「アレッ」「どうだったっけ?」と難しくなっていきます。「失敗するくらいちょっと難しい」が転倒予防や認知症予防に効果がある負荷になります。
間違っても細かいことは気にせず「あはは」と笑い合う、とても楽しいプログラムですので、興味のある方は八重瀬町の自主体操サークルを見学してはいかがでしょう。
(参考:スクエアステップ協会ホームページの紹介動画▶ https://youtu.be/jvDv2QEW1H0 )
■ 自主体操サークルを始めたきっかけ、活動の意義について
玻名城健康体操サークルには6名のリーダーがいらっしゃるそうですが、本日は新垣さんと福地さんのお2人に話を伺いました。
左から新垣徳子(あらかきのりこ)さん、福地和子(ふくちかずこ)さん
【福地さん】 平成30年5月に八重瀬町主催の「運動サークルサポーター養成講座」があり、町内各地域から18名、玻名城からは私1人が参加しました。そこで介護予防や自主体操サークルの必要性を学びました。しかし、地域に戻り一人で自主体操サークルを立ち上げるのに不安があり、役場にもう一度リーダー養成の研修をしてほしいとお願いしました。10月に「スクエアステップ リーダー養成講座」が開催されることになり、新垣徳子さんを含め3名の方が玻名城から参加し、11月に私も含め4名のリーダーで玻名城健康体操サークルを立ち上げました。
現在は6名のリーダーで協力しながらサークルを開催しています。私たちが自主体操サークルを立ち上げられたのは、地域包括支援センターが介護予防に力を入れてくれて、行政のサポートがあったからだと感じています。
【新垣さん】 私たちの地域には、「玻名城きらら」という15名の女性ボランティアグループがあり、もともと地域で集まる土台があります。そのメンバーがリーダー養成講座を受講し、介護予防に関する知識を共有できていることが強みだと思います。また、健康体操サークル以外にも、ミニデイと地域サロンを交互に週1回、自主運営しています。
健康体操サークルは介護予防の取り組みとして行っており、参加される皆さんはその主旨を理解され毎回楽しみに参加しています。スクエアステップの運動中はこちらから休息を促さないと休まないぐらい熱中しています。
参加者の中には身体が不自由な方もいます。最初は歩行が不安定だった方がデイサービスの曜日を変更して健康体操サークルにも参加するようになり、歩行が安定してきたのを見ると、私たちの活動の大切さを実感します。また、一人暮らしの方を訪問して継続して呼びかけしていく中で、参加につながった人もいます。
【福地さん】 コロナ禍で一時、健康体操サークルを中断した時期もありました。その時は、地域の80代・90代の方々で転倒して要介護認定を受けた方が増えたので、一日も早く健康体操サークルを再開させなければいけないと思いました。再開する際には行政と相談してアルコールやマスク、体温計や血圧計など感染対策に必要な物品をサポートしてもらい助かりました。
私たちの目的は「閉じこもり予防や介護予防を行い、地域の方々の健康をいかに維持するか」だと考えています。また、認知症の進行や体力低下が見られる参加者について地域包括支援センターの方と相談することもあります。
八重瀬町地域包括支援センターの皆さん、左端下段が取材を受けて頂いた浜元美香(はまもとみか)さん
■ 自主体操サークルを創出するための取組み、継続支援について
八重瀬町では役場の社会福祉課に介護予防事業担当職員がいます。社会福祉課内に直営の地域包括支援センターがあり、協働で自主体操サークルの支援を行っています。地域包括支援センターで介護予防事業に関わっている浜元美香さん(社会福祉士)にお話を伺いました。
【浜元さん】 八重瀬町は34の行政区があり、高齢者が歩いて通える公民館などを拠点に「住民主体の自主体操サークル」を立ち上げ、活動を継続するよう支援しています。地域によって実施するプログラムはそれぞれです。1時間で終わるサークル、DVD体操を数種類実施するサークル、スクエアステップ エクササイズを行うサークル・行わないサークルもあります。
平成27(2015)年に介護予防・日常生活支援総合事業が始まり、一般介護予防事業は「自主体操サークルなど住民運営の通いの場を中心とした取組」に見直されました。八重瀬町でも自主体操サークルの取組みを行うことになり、平成29(2017年)年に先行して取り組んでいる北中城村や奈良県生駒市を視察しました。
自主体操サークルで行う運動プログラムは、高知市の「いきいき百歳体操」を参考にして、平成29年(2017)年に八重瀬町オリジナルの「やえせカジマヤー体操」を作りました。また、徳島県の「いきいき百歳体操・徳島版(認知機能改善編)」も合わせて1枚のDVDに編集して配布しています。
【浜元さん】 DVD体操に加えて「スクエアステップ エクササイズ」(以下、SSE)も取り入れることにしました。スクエアステップ協会理事の中垣内真樹氏(鹿屋体育大学教授)に協力していただき、八重瀬町で平成29(2017)年以降、講習会等を開催しています。
平成30年2月の「SSE指導員養成講座」を皮切りに、5月「運動サークルサポーター養成講座」、10月「SSEリーダー養成講座」、令和元年7月は「SSEリーダー養成講座」と「SSEフォローアップ研修」を同時に開催しました。その後は、「リーダー養成講座」と「フォローアップ研修」を交互に毎年実施しています。「フォローアップ研修」は県内でスクエアステップ公認指導員の資格を持っている方に協力していただいています。
■ 今後の取組について
【浜元さん】 立上げ支援を始めた平成30(2018)年に11ヶ所の自主体操サークルができ、令和5年1月現在13ヶ所が活動しています。自主体操サークルに参加している方々は筋力や体力が向上・維持されています。また、何らかの理由でサークルに来なくなった方がいても、「来週待ってるからおいでよ」と声かけがあって再び参加するというように、参加者同士のつながりによって活動が継続されています。
自主体操サークルがある自治体は、(サークルの参加者だけに限らず)地域全体に「介護予防」や「地域で高齢者を支える」意識が高いように感じます。
また、八重瀬町でも要支援者・事業対象者の自立を目的とする「短期集中予防サービス」を実施していますが、社会参加や生活機能維持のための通いの場としても自主体操サークルの必要性が再認識されています。
今後は、34行政区すべての地域に「週1回以上の頻度で開催する自主体操サークル」ができるよう取り組んでいきたいと思います。
《取材感想》
平成27(2015)年に介護予防・日常生活支援総合事業が創設され、一般介護予防事業は「自主体操サークルなど住民運営の通いの場を中心とした取組」に見直されました。現在、全国でも、県内の各市町村でも自主体操サークルが増え、元気な高齢者が増えています。しかし、残念ながら沖縄県介護保険広域連合の29構成市町村で自主体操サークルを中心とした取組を行っているのは数ヶ所にすぎません。
八重瀬町では自主体操サークルが活発に活動していて、今後も更に取組を強化したいとのことです。「自主体操サークルは必要だと思うが、うちの町には住民のリーダーがいない(と思う)」、「どのように住民に働きかけたらよいのか分からない」と考える市町村もあるかも知れません。八重瀬町では行政がどのような準備を行い、住民に働きかけたのか、そして住民がどのように主体的に取組んできたか、他市町村の皆さんに参考になる内容を教えていただきました。
取材に協力いただいた玻名城健康体操サークルの皆さん、八重瀬町地域包括支援センターの浜元さん、ありがとうございました。
(広域連合・渡慶次)
八重瀬町の概要 ◇人口:32,201人 ◇65歳以上:7,039人 ◇高齢化率:21.9% ◇要介護認定率:15.0% ◇調整済み認定率:15.1% (令和4年3月末現在) ◇行政区:34 自主体操サークル数:13 |