個人のお宅で開催する自主体操サークル

公開日 2023.02.17

北中城サロンとみなが
個人のお宅で開催している「サロンとみなが」

 

自主体操サークルは公民館や集会所だけでなく、個人の住宅、空き家・空き店舗、学校のコミュニティースペース、医療機関や介護サービス事業所・銀行・ホテル・大型スーパーの空きスペース、公園などの屋外も会場にすることができます。公民館・集会所を使用するケースが多いと思いますが、工夫すれば色々な展開ができると思います。

今回、個人のお宅で行っている北中城村の自主体操サークル「サロンとみなが」を取材させていただきました。

 

■  自主体操サークル「サロンとみなが」

「サロンとみなが」は、毎週水曜日の朝9時30分から11時頃まで、富永みさ子さんのご自宅で開催される自主体操サークルです。平成30(2018)年にスタートして5年目になります。本日の参加者は9名、全員女性で、最高齢は94歳の方がお2人いらっしゃいました。「サロンとみなが」のメンバーはご近所の方だけでなく、少し遠い所から民生・児童委員さんと車でいらっしゃる方や、別の字から娘さんと車でいらっしゃる方もいます。(民生・児童委員さんと娘さんもメンバーで、一緒に体操をしています)

富永さんのご自宅は住宅街の一角にある一軒家。メンバーがやってくると、富永さんが笑顔で出迎え、ゆんたくが始まります。富永さんは自然な会話の中で皆さんの近況や体調の確認を行い、出欠状況をノートに記録しているそうです。

当初のメンバーは4名だったので仏壇間1部屋を使っていたのですが、メンバーが増え、今では仏壇間・応接室・台所・廊下まで使っています。

 

「サロンとみなが」のプログラム

◇皆さんで「北中城村歌」斉唱、「パ・タ・カ・ラ滑舌練習」、「早口言葉」で口周りからウォーミングアップ。

◇村役場福祉課で作った「ラジオ体操、上下肢の筋トレ、認知症予防の体操」のDVDを観ながら体操をします。(約40分)

◇ティータイム。お菓子もつまみながら、和気あいあいとした雰囲気で、楽しくゆんたくを楽しんでいました。

◇最後に、転倒予防と認知症予防のプログラム「スクエアステップ エクササイズ」を20分くらい。

 

北中城村の自主体操サークルは、①ラジオ体操、②筋トレ、③スクエアステップ エクササイズ の3つを基本プログラムとして行っています。各サークルではこの3プログラムに独自の体操を追加したり、別のプログラムに変更して、自分たちが楽しく続けられ、且つ、効果を実感できる内容にしてしています。「サロンとみなが」でも、村歌や滑舌練習などを取り入れたプログラムに工夫しているようでした。

 

参加メンバーからは、「近所なので参加しています。ここに来ると元気がもらえます」、「富永さんに声をかけてもらい、最近から参加しています。地域のつながりがなかったので、ここに来て新しく友達ができて楽しいです」、「別の字に住んでいますが、そこの自主体操サークルは体力的についていけなかったです。ここだと自分のペースでゆっくり動けて助かっています。運動半分・ゆんたく半分、見るだけでも楽しいよ」という声をお聞きしました。


北中城サロンとみなが2
北中城村歌斉唱、滑舌の練習からスタート

北中城サロンとみなが4
ラジオ体操に続けて下肢の筋トレ
 

スクエアステップ(画像)
転倒予防と認知症予防のスクエアステップ エクササイズ
 

終了後(そうじ)
最後は参加メンバーで片付け・掃除

 

■ 富永さんに活動のきっかけや今後の取り組みなどについて伺いました。

【富永さん】 以前、民生・児童委員や地域のボランティア活動をしていました。島袋(しまぶく)公民館でも自主体操サークルがあり多くの方が参加していましたが、「知り合いが少ないから公民館には行きづらい」とか「大人数のところは気おくれしてしまう。少人数の方が気楽に参加できる」という声もお聞きしていました。

北中城村では役場福祉課が自主体操サークル世話人養成講習会を開催しているのですが、私も平成30(2018)年6に受講し、「誰でも気軽に参加できて、気持ちも体も元気になれるサロンを作りたい」と思いました。しかし、1人ではできないので民生・児童委員の與儀さんに声をかけ、地域の方を誘って平成30年11月から4名のメンバーでサロンを始めました。

玄関前に椅子を置いて車の乗降時の休憩所を作ったり、上がり框に台や椅子を設置し段差昇降や靴の脱着をしやすいようにしたりと、自分で工夫しました。

参加者にとって居心地の良い環境を作るのは当たり前。何よりやーぐまいさせないこと、外出する場所があることが大切だと思います。自分自身についても、サロンを始めてから新しいつながりができ、規則正しい生活を過ごせています。

参加される皆さんが毎週水曜日を楽しみにしており、また自分の健康のためにもこれからも継続していきたいと思います。

 


村役場の吉本有芳さん(左)と富永みさ子さん(右)

 

■ 個人のお宅、その他の場所を会場とする自主体操サークルについて

自主体操サークルを行う会場は、公民館や集会所だけでなく、「サロンとみなが」のように個人の住宅や介護施設など様々な場所が考えられます。北中城村では今後、どのような取組を考えられているのか、村役場福祉課の担当者の方に話を伺いました。

 

【福祉課高齢者福祉係長・田里淳子(たさとじゅんこ)さん】

公民館や集会所、個人の住宅、介護施設など、自主体操サークルを行う場所はどこでも構わないと思います。地域における支え合い活動を進める中で、村内の障害者福祉施設や介護老人福祉施設から「空きスペースを提供しても良いですよ」とおっしゃっていただいているので、今後、そのような場所も自主体操サークルや高齢者の居場所づくりに活用できると思います。

住民の皆さんに働きかけて、「自主体操サークルや居場所づくりに取り組みたい」という方を増やすことが私たちの課題です。

「サロンとみなが」の富永さんは、高齢者に必要な居場所づくりに熱心な方です。信念を持っていて、素敵な活動をされています。サークルの参加者みなさんも富永さんを信頼していて、会場づくりや片付けを自主的に行い、富永さんを支えているのがよく分かります。役場としてもこのような自主活動が継続されるようにサポートしていきたいと思います。

 

【介護予防担当の吉本有芳(よしもとゆうか)さん】

北中城村は15行政区で12の自主体操サークルが活動していますが、個人のお宅でやっているのは「サロンとみなが」だけです。「サロンとみなが」はまさに”アットホーム”で、参加メンバーの関係性が深いのが特徴です。新型コロナウイルス感染症の拡大期に自主体操サークルの活動を自粛していただいた時期にも、体調を心配して他の参加者の自宅を訪問するなど、メンバー同士がお互いを気にかけているのを強く感じます。

とは言え、個人のお宅を開放して毎週活動するのは簡単ではないかも知れません。以前、短期集中予防サービスを利用している方の自宅近くに自主体操サークルがなかったので、ご自宅でやってみたらどうかと促したことがあるのですが、実現しませんでした。「サロンとみなが」は、富永さんの性格や周りにサポートしてくれる人がいた等の条件が揃っていたのが良かったと思います。しかし、地域には富永さんのような方は大勢いらっしゃいますので、行政が住民の皆さんにしっかり声掛けをすれば「個人のお宅」での自主体操サークルはもっと増えると思います。

「自主体操サークルは公民館でやるもの」という固定概念が行政の担当者にあると、介護予防活動の拠点を増やしていく妨げになる可能性があると思います。場所は個人のお宅、空き家・空き店舗、学校のコミュニティースペース、医療機関や介護サービス事業所・銀行・ホテル・大型スーパーの空きスペースなどどこでも良いと思います。もっと色々な場所で数多くの自主体操サークルが活動するようになると良いですね。

 

《取材感想》
今回、個人のお宅で開催している自主体操サークルを取材しました。会場が公民館や集会所という公の場ではなく「個人の私宅」であるということと、(自治会や老人会など地域の集まりをベースにして始まったものではなく)「個人が」周囲の協力を得て始めた自主体操サークルの形を初めて見学させてもらいました。

地域のつながりを大切にし、ご近所の方や友人に介護予防活動の場を提供し、ご自身の介護予防や生きがいにも役立っているこの活動はとても勉強になりました。市町村の介護予防事業担当者の皆さんにとっても、介護予防事業の取組みが広がる可能性を感じていただけたのではないでしょうか?

取材を受けていただいた皆さん、ありがとうございました。
(介護広域・渡慶次)

 

北中城村の概要

◇人口:18,287人 ◇65歳以上:4,130人 ◇高齢化率:22.6% ◇要介護認定率:16.6% ◇調整済み認定率:16.7% (令和4年3月末現在)

◇行政区:15 ◇自主体操サークル数:12