自主体操サークルの立上げ支援(本部町)

公開日 2023.03.20

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具志堅区の自主体操サークル「アンダバナー」

 

本部町では自主体操サークル創出に取り組んでおり、現在、4つのグループが活動しています。(令和5年3月取材時)

具体的にどのような手法で自主体操サークル創出に取り組んでいるのか、本部町を取材しました。

これから自主体操サークル創出に取組むことを考えている市町村、既に取り組んでいるが更に数を増やしたいと考えている市町村の担当者に参考にしていただければ幸いです。

 

 

本部町は直営の地域包括支援センターが1ヶ所あり、理学療法士の玉城さおり(たましろさおり)さんが中心となって介護予防事業に取り組んでいます。

 

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本部町地域包括支援センターの玉城さおりさん
 

 

■ 市町村が「自主体操サークル創出」に取組む際に、何から始めたらよいか教えてください。

 

【玉城さん】 先ず、「市町村として自主体操サークルを中心とした介護予防事業を進めて行くという決心をする」ことが大切だと思います。

本部町は今後、人口減少と高齢化が進むことが予想され、介護予防はとても重要です。「住み慣れた地域で、何歳になっても楽しく、生きがいを持って生活できる」健康長寿の村をめざして、住民、行政、関係者が協力して介護予防の仕組みを整えていこうと考えています。

 

本部町ではこれまで「住民が主体的に運営する自主体操サークル」がなかったので、行政の中での理解や意識の統一、住民や関係者への説明などやるべきことがいろいろあります。目指す状態に到達するまで、ぶれることなく事業に取り組んでいくために「市町村として決心する」ことが第一だと思います。

 

本部町が自主体操サークル創出に取組み始めようとした矢先に新型コロナウイルス感染症が流行しはじめ、出鼻をくじかれた感じがありました。

しかし、少しずつ状況が落ち着いた時期に、住民から「地域のミニデイや地域食堂が中止となったまま再開しない」「体が弱ったように思うので体操を教えてほしい」と相談があり、自主体操サークルを立ち上げることができた地区が何ヶ所かあります。

 

コロナ禍が落ち着いたこれからの時期は、自主体操サークルを創出するのに絶好のチャンスかも知れません。

 

 

 

■ 行政内部での意識の統一と協力体制

 

【玉城さん】 役場福祉課と地域包括支援センターが介護予防事業の担当部署ですが、生活支援体制整備事業や認知症総合支援事業の担当者もいるので、「行政内部での意識の統一と協力体制」が大切だと思います。週1回の地域包括支援センターミーティングと月1回の地域支援事業全体会議において、介護予防の取組について方針や進捗状況の報告をしています。同様に、生活支援体制整備事業と認知症総合支援事業についても担当者から報告があるので、各事業を連動させながら進めることに役立っていると思います。

 

また、包括支援センターのプランナーも自主体操サークルの現場を一緒に見に行ったり、立上げ支援の体験会にも参加してもらうようにしています。

これから自主体操サークル創出に取組む市町村の担当者の方は、介護予防事業担当者以外の職員にも見学や体験の機会を作ってあげることをおススメします。

 

 

■ 自主体操サークルの基本コンセプト

 

【玉城さん】 国がモデル事業を通してまとめた「自主体操サークルの基本コンセプト」というものがあります。「住民主体」、「自分たちだけでできる」、「元気高齢者も虚弱高齢者もできる」、「住民同士が支え合う地域づくり」がキーワードになり、私たちもこの基本コンセプトに沿って、自主体操サークル創出に取組んでいます。

 

どんな体操が良いのかが皆さん気になると思います。国は高知市が作った「いきいき百歳体操」を主に紹介していますが、「大東元気出まっせ体操」、「スクエアステップエクササイズ」、「コグニサイズ」、その他いろいろな運動が各市町村で行われています。沖縄県内では「いきいき百歳体操」を行っている市町村が多いようですが、いくつかの市町村を視察して検討すると良いと思います。

 

自主体操サークルの基本コンセプト
  1. 住民が主体的に運営する体操サークルを週1回以上の頻度で行う
  2. 自分たちだけで実施でき、介護予防効果があるプログラムを行う
  3. 元気高齢者も虚弱高齢者もできる体操を行う
  4. 人と人とのつながりを大切にし、住民同士が支え合う地域づくりをめざす

 

■ 住民にどのように働きかけるのですか?

 

【玉城さん】 私たちは、①「リーダー養成講習会を開催し、修了者がサークルを立ち上げる」方法と、②「希望するグループで体験会(1回)や立上げサポート(2ヶ月)を行い、3ヶ月目から自主運営化する」方法を併用しています。町の広報誌に①リーダー養成講習会や②自主体操サークル体験会のお知らせを掲載し、希望者を募っています。広報誌に、新たに立ち上がった自主体操サークルを紹介するのですが、それを読んで関心を持った住民から問い合わせが来ることもあります。

 

介護広域の「地域マネジメント力向上支援モデル事業」で大阪府大東市の逢坂伸子さんにアドバイスをもらっているのですが、上記①②だけでなく、③各字の老人会やカラオケサークル等の既存の集まりに私たちが出向き、その活動に体操を取り入れてはどうかと呼びかける方法も効果的だと教えてもらいました。

 

 

■ 本部町の今後の計画

 

【玉城さん】 先述のモデル事業の一環として、令和5年1月14日に大東市の逢坂伸子さんをお招きし、「住民が主役の地域づくり~人生100年時代にそなえて~」のタイトルで住民向け講演会を開催しました。多くの住民に介護予防や生活支援の話を聞いていただきましたが、講演会をきっかけに町長を先頭に村を挙げて介護予防に取組む機運が高まっています。


本部町は15の字(行政区)があります。少なくとも各字に1ヶ所、町全体で15ヶ所の自主体操サークルを立ち上げたいと考えています。コロナの影響で取組が停滞してしまいましたが、令和5年度中に目標を実現できるよう頑張りたいと思います。

 

 

【玉城さん】 これから自主体操サークル創出に取組む市町村の皆さんは、どこから手をつければよいのか悩んでいる方もいらっしゃるかも知れません。本部町でよければ視察にいらしてください。自主体操サークルの立上げ支援の詳細、地域に対する仕掛け方など、助言があると助かるのではと思います。

 

介護広域のサポートもありますし、私たちは大東市のモデル事業がとても役に立ちました。これらのサポートを活用しても良いと思います。

 

 

 

 

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続いて、令和4年11月に立上った「具志堅アンダバナー体操サークル」を取材しました。

 

 

■ 具志堅アンダバナー体操サークル


本部町具志堅公民館で、毎週月曜の午前10時~11時に活動しています。サークル名の「アンダバナー」は、別名「ウマノアシガタ」、具志堅区でよく見られる花の名前です。

 

サークルのメンバーは14名ですが、取材の日は65歳~93歳までの10名が参加(うち、要支援・要介護の参加者3名)。ほとんどの方が歩いて参加されていますが、ご家族に車で送ってもらっている方もいるそうです。

 

 

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スクワットなど下肢の筋トレ
 


本部町自主体操11
スクエアステップエクササイス
 

 活動日の流れ

7:30 公民館放送で「本日の午前10時から自主体操サークルがあります」とアナウンス
9:45 先に会場に到着したメンバーが椅子や重りなどの準備をする
10:00 上肢の筋トレ、下肢の筋トレ
  休憩(飲水、おしゃべりタイム)
  スクエアステップエクササイズ
11:00 プログラム終了。みんなで片付けて帰ります

 

「体操をすることで元気になってきています。冠婚葬祭にも行けるようになりました」

「みんなとおしゃべりすることが楽しい。笑いあい、教えあいながら交流しています」

「膝の痛みが良くなって、段差の昇り降りがしやすくなっています」

「物忘れが減ってきている感じがする」

 等のお話を参加メンバーの皆さんからお聞きしました。

 

 

 

■ 具志堅アンダバナー体操サークルはどのようにして始まったのですか?

 

具志堅アンダバナー体操サークルができた経緯について、具志堅区の区長さん・金城均(きんじょうひとし)さんに話を伺いました。

 

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左:金城均(きんじょうひとし)区長、右:書記の牧野由佳(まきのゆか)さん

 

 

【金城さん】 生活支援コーディネーター(以下、SC)の比嘉さんが発行している「まちづくりだより」の令和4年10月号に、伊豆味区の自主体操サークル「かがやきクラブ」の活動が紹介されていました。この記事を見て自主体操サークルに興味を持ちました。SC比嘉さんが公民館に来た時にその話をしたら、「体操体験会をやってみないか」と持ち掛けられ、介護予防担当の玉城さんと連絡がついて、具体的な調整を行いました。

早速、10月末に体操体験会を1回行い、11月には「具志堅アンダバナー体操サークル」を立ち上げました。2ヶ月間は毎週、玉城さんに来てもらって体操の仕方やサークルの運営方法等を教えてもらい、令和5年1月から自分たちだけで自主運営するようになりました。

この間、玉城さんとSC比嘉さんにいろいろ指導してもらい、とんとん拍子に自主体操サークル結成にまで至りました。自主活動になってまだ日が浅く、少し不安な面もありますが、参加される皆さんの協力があるので大丈夫だと思います。

【金城さん】 「具志堅アンダバナー体操サークル」は、みんなでおしゃべりをしながら楽しく交流できるところが素晴らしいと思っています。介護保険のデイサービスを利用しながら体操サークルにも参加している方が3人いらっしゃいますが、〇〇さんはこちらに参加するようになってから足の運びが良くなり、自宅から公民館まで楽に歩けるようになったように思います。

 

 

《取材感想》

平成27(2015)年に、介護予防事業は「自主体操サークル等の住民運営の通いの場を中心とした取組」に見直しが行われました。全国的には自主体操サークルが定着しており、沖縄県内でも那覇市や名護市などの市部では「いきいき百歳体操」を行う自主体操サークルが数多く活動しています。

しかし、沖縄県介護保険広域連合の構成市町村においては、未だに自主体操サークル創出に着手していない市町村が多いのが現状です。

 

今回、本部町での取組みを取材し、自主体操サークル創出に取組む際のポイント(◇行政内部での意識の統一と協力体制、◇自主体操サークルの基本コンセプト、◇住民への働きかけ方、など)を教えてもらいました。これから自主体操サークルの創出に取組む市町村の皆さんに参考となるのではと思います。

 

取材にご協力いただいた本部町の皆さん、ありがとうございました。

 

 

本部町の概要

◇人口:13,020人 ◇65歳以上:4,267人 ◇高齢化率:32.8% ◇要介護認定率:18.1% ◇調整済み認定率:16.0% (令和4年3月末現在)

◇行政区:15 ◇自主体操サークル:4ヶ所